2010.06.23
7月8日のパリ、オペラ座が満席なら、映画館へ。
バレエ「ドガの小さな踊り子」を生中継で観る!
映画『オペラ座のすべて』が公開され、それに続いて3月にはオペラ座の東京公演があり、バレエ熱がますます高まる日本。夏のパリ観光に"聖地"オペラ・ガルニエ宮でバレエをみよう!と目論んでいる人もいることだろう。
この劇場の問題は、連日満席ということだ。
建築的に大変美しい劇場ながら、客席は2000弱しかないのだから。せっかく楽しみにパリまで来たのに・・・と、大勢の観光客ががっかりしている。それならば、と、オペラ座が新しい冒険をこの7月からスタートする。来年の7月までの1年間に、フランス、ヨーロッパ諸国の映画館で、ガルニエ宮の公演を6回、ライブでおみせしましょう!というものだ。この方法なら何万人もが生の公演の情熱、感動を共有することができる。時差の大きなアメリカや日本における中継については、今後の課題とか。
6公演の内容と日程は、次の通り。
7月8日「ドガの小さな踊り子」(パリでは現在3館で中継確定)、9月16日「椿姫」、12月2日「白鳥の湖」、来年2月8日「カリギュラ」、3月28日「コッペリア」、7月9日「天井桟敷の人々」。クラシック作品、オペラ座のために創作されたバレエというのがセレクションの基本となっている。
そう考えると、「ドガの小さな踊り子」が初回というのはすごく納得がゆく。
バレエ「ドガの小さな踊り子」より。ドガがバレエをテーマに描いた絵画を彷彿させるシーンが数々登場する。Photo Icare/Opera national de Paris
このバレエは、オペラ座の舞台、ダンサーをテーマにした作品を残したドガによる、彫刻「14歳の踊り子」が創作のベースとなっているからだ。 チュチュに実際の布地が使われているが特徴のこの作品、今もオルセー美術館でみることができる。美術館がその部分の修復について、何年か前にオペラ座のクチュール部門に相談をした。その際に、この彫刻のモデルとなった踊り子に、当時オペラ座の歴史部門を担当していたマルチーヌ・カーン女史が興味をもったのだ。それはマリー・ヴァン・ゴータンという実際にオペラ座に在籍していた3姉妹のダンサーの一人で、その妹はその後オペラ座で名声を博すダンサー、イヴェット・ショーヴィレの教師になった、ということがわかり・・・と、カーン女史は緻密にマリーの行方を辿っていった。
14歳の踊り子が、画家のモデルとなるシーン。Photo Sebastien Mathe/Opera national de Paris
ドガが踊り子たちを描いていた時代、オペラ座といえども女性ダンサーの地位は男性顧客に囲われることで生計を立てていたというように、現在のようなアーチストという存在とは程遠い。従って貧しい家の娘たちが選ぶ職業で、この彫刻のモデルとなるマリーもそうした一人。ステージ外で、画家のモデルをするのも稼ぎの一部だったのだ。姉アントワネットは盗みの嫌疑か何か好ましからざる事情で、オペラ座を追われている。マリーにしても、その後はどうなったことやら・・・。
美術館のガラスケースを抜け出し、踊る少女。Photo Icare/Opera national de Paris
白いシーツが舞台に舞う。当時女性が稼ぐ方法の1つは、重労働に耐え、洗濯屋で働くことだった。Photo Sebastien Mathe/ Opera national de Paris
オペラ座のバレエマスターであるパトリス・バールが2003年に創作したのは、そうした史実をベースにし、ドガの作品でみられる当時の稽古場の様子や19世紀末のパリの情景をもりこんだ2幕からなるバレエ。プロローグで、14歳の踊り子の彫刻がガラスの展示ケースから抜け出して物語が展開し、エピローグでは再びガラスケースに戻るという仕掛けだ。昨年日本でも好評を博したワイズマン監督のドキュメンタリー映画で現在のオペラ座の裏側を楽しんだように、このバレエでは19世紀末のオペラ座の裏側が堪能できるので、ぜひ見ておきたい作品である。(そして、9月18日から横浜美術館で開催の「ドガ展」で展示される絵画「エトワール」で、なぜ舞台の袖に黒い服の男性がいるのかも、よくわかる!)
エトワール・ダンサーとバレエ・マスター。オペラ座の舞台裏、リハーサ
ルのシーンで。Photo Sebastien Mathe/ Opera national de Paris
なおオルセー美術館で多数見ることのできるドガの作品。彼はぺルチエ通りのオペラ座、それが燃えた後はガルニエ宮に出入りをして、踊り子たちやステージを舞台の袖から部分をさまざまデッサンし、それをもとにアトリエで作品を仕上げていたそうで、現実をそのまま描いているというものではないそうだ。
フランスにおける中継映画館情報は以下にて。
www.cielecran.com
