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2009.09.24

パリで、オペラ座の映画と、
オペラ座のバレエを観る。

icon_paris.jpg 大村真理子の今週のPARIS

日本では10月10日からロードショー公開が決まった映画「パリ・オペラ座のすべて(フランスでのタイトルはLa Danse)」。映画の封切りが水曜と決まっているフランスでは、10月7日に公開される。これはフレデリック・ワイズマン監督がオペラ座で84日かけて撮影した、日ごろ一般人が見ることのできない舞台裏のドキュメンタリー映画だ。

オペラ座は20年前にバスチーユにも劇場を建てたが、本拠地は19世紀末に建築されたガルニエ宮。この劇場内の観光客が見学できない部分や公演後の空っぽの姿を映画ではみることができる。芸術監督とダンサーの会話や振付家とのミーティングもフィルムに収められている。

2時間以上の長い映画だ。こうしたダンス以外の要素が、さまざまなバレエのリハーサル・シーンをつないでいる。「くるみ割り人形」のような有名なクラシック作品もあれば、現代作品も。オペラ座の年間プログラムには、振付け家がオペラ座バレエ団のために創作するバレエが必ず盛り込まれていて、この映画が撮影された2007年は英国の気鋭の振り付け家ウエイン・マクレガーによる「ジェニュス」だった。

11月にガルニエ宮で、3人の若手コレオグラファーの作品を集めて「ミルピエ、ポール、マクレガー」と題された中でも再演されるこの作品。映画ではマリー・アニエス・ジロとバンジャマン・ぺッシュという二人のエトワールによるパ・ド・ドゥの創作過程を、垣間見ることができる。マクレガーと二人のやりとりは、バレエ作品はこうして作られるのか、という観客ののぞき見的好奇心を刺激する。この作品の創演者の一人、バンジャマン・ぺッシュに話を映画について、「ジェニュス」について幾つか質問してみた。

090916o_1.jpg 常にエネルギッシュなバンジャマン・ペッシュ。photo:MARIKO OMURA

090916o_2.jpg 映画『パリ・オペラ座のすべて』の中の「ジェニュス」のリハーサルシーン。左がマリー・アニエス・ジロ、右がバンジャマン・ペッシュ。photo:Laurent Philippe

なお、この映画はナレーションが一切ない。画面から聞こえるのは、監督が撮影現場で拾った音。映画の職員食堂のシーンでは、ランチの付け合わせにクスクスをオーダーしている声が聞こえる。トリビア・ファンのために書いてしまうと、これ、バンジャマンの声です。

Q.オペラ座内ではすでに試写があったそうですが、この映画の感想は?

A.なんとなく内容は聞いていますが、僕はまだ見ていないんです。舞台裏の映画というのは観客にはきっと興味深いものでしょう。でも、僕の気持ちとしては、ちょっと微妙です。というのも稽古とか、僕たちの日常は僕たちだけのもので、一般の人に見せるものではありません。それにクリエーションの過程を見せてしまうというのは、一種"製造の秘密"をみせることですからね。その神秘はヴェールをかけたままが望ましいと......。

Q. 3か月間の撮影期間は、どんなふうでしたか?

A.最初は、あ、撮影されてる、というような意識があったけど、ワイズマン監督のこれは才能でしょう。ある時点から撮影隊の存在をまったく感じなくなりました。おそらく、そこから彼は自分の撮りたいものが撮れるようになったのではないでしょうか。

090916o_3.jpg 2007年の「ジェニュス」より。エトワール3名の迫力のダンスは映画ではあいにくと見られない。左から、ペッシュ、ジェレミー・べランガール、マチュー・ガニオ。photo:Michel Lidvac

Q.「ジェニュス」について少し話してください。

A.とても、速い動きの振り付けです。それも、すべての関節が独立した動きをするというもの。クラシック・バレエはどちらかというと、腰、ひざ、足首にかけて直線的な仕事ですが。マクレガーの振り付けは、身体を大きく広げ、それも極端に......。だから、この公演があったとき僕は「くるみ割り人形」の稽古が重なっていたので、ちょっときつかった。でも、マクレガーのこの作品ではジャンプしたり、脚をもちあげたり、ということがない。ほとんどが上半身の仕事で、どちらかというと舞台に足をつけた振り付けですね。

Q.「ジェニュス」のテーマは何ですか?

A.ダーウィンの進化論がベースのバレエです。最初の動きはエネルギーが何かをクリエートしいてる、といったエレクトロン的動き。映画で見られる僕とマリー・アニエスのパ・ド・ドゥ、マチュー・ガ二オとアニエス・ルテスチュのパ・ド・ドゥは何かが形成されてゆく段階というように、それまでの激しさがここでぐっと治まります。最後は、複数のアトムがどんどんと増大してゆく・・・というような、とこう僕は解釈していますけど、詳しいことはマクレガーに聞いたほうがいい(笑)。この作品、すごく革新的だと僕は思いますよ。物語を先に読まないとわからないというバレエではなく、フィジッカルな作品。音楽も舞台装置も素晴らしく、オペラ座にとって素晴らしい創作です。

090916o_4.jpg タイプの異なるパ・ド・ドゥは、どちらも見ごたえ十分。「ジェニュス」より。ペッシュとジロのパ・ド・トゥの稽古を映画で見られる。

090916o_5.jpg アニエス・ルテスチュとガニオ。このシーンが映画を締めくくる。photos(左右ともに):Laurent Philippe

Q.マクレガー本人についてはどのような印象を?

A.彼は因習的なことや過去の取り決めのようなことを崩してゆくことを好むタイプですね。このバレエで、僕はマリー・アニエス・ジロと組みました。彼女との本格的なパ・ド・ドゥはこれが初めて。彼女は僕には大きすぎるので、オペラ座では他の作品で僕たちを一緒に踊らせるということはないんです。でも、エネルギー、身体が発するものという点でのレヴェルが同じなので、僕たち二人の調和は悪くないですよ。彼女とのパ・ド・ドぅはすごく早く出来上がった。彼、3日くらいで完成させたのではないかな。でも舞台ではそれを箱の中で踊ること、その箱が動くこと、そして箱の中がオペラ座の舞台の傾斜とは反対に傾斜していることなどは、その時点では知りませんでした。常にアンバランスなので、このパ・ド・ドゥは重心の挑戦という面もありました。彼は不安定、快適ではないことを求めたんですね。

Q.映画の中で、創作へのダンサーの参加がよくわかるシーンがあります。

A.彼が持つアイディアから出る動きを、彼は僕たちに求めてきます。そうすると、僕たちのクリエイティビティがこれによって刺激されるんです。それでこちらから提案をすることになって......。彼がそれを気にいると、今度は彼から、ではそれをこんな方法では?というように続くといった、互いの間でのやりとりがたくさんありました。

Q.この機会に、あなたがADを務め、今や日本のバレエファン待望の「エトワール・ガラ」について少し。来夏の公演についてはもう準備が始まっているのですか?

A.はい。メンバーは日本でもすでに発表されています。それにイザベル・シャラヴォラが加わって、全部で今のところ10名。プログラムはこれからの仕事です。

Q.特に、踊りたいと思っている演目はありますか?

A.他の参加者の希望を聞いて、チーム内でバランスのとれるプログラムを考えなければ。僕の頭の中にあるタイトルは「......」。まだオフレコ!いずれにしても昨年同様、参加ダンサーによるクリエーション、僕たちが踊りたい作品、日本のバレエファンにとって未知の作品を盛り込みます。

090916o_6.jpg 「ジェニュス」より。コール・ド・バレエも大活躍。photo:LAURENT PHILIPPE

Q.オペラ座のエトワールであることは、あなたにとってどういう意味がありますか?

A.幅広いレパートリーを踊れることですね。多くのコレオグラファーと仕事ができるし。美しいコスチュームが用意され、宝石箱のように素晴らしい劇場で踊れるのは、オペラ座ならでは。

Q.ところで、あなたはなぜオペラ座バレエ団を選んだのですか?

A.僕が自分でオペラ座のダンサーになる!と決めたわけじゃないんです(笑)。小さいとき、僕が踊りたかったのはジャズダンス。夏の研修会に参加したときに、教師が僕には素質があるからとオペラ座バレエ学校のオーディションを受けるように両親に勧めたからなんです。合格してすごく誇らしく思ったものの、実はその当時、オペラ座が何なのかなんて知りもしなかった。学年が上がるごとに試験があって、そうするうちにバレエへの情熱がどんどん増していって......、それで、今日に至っています。

Q.最後に。オペラ座バレエの一番の特徴とは?

A.フランス・スタイルのバレエでエレガンスがあります。でも、なによりもこのバレエ団を特徴づけているのは、その格調の高さ。この一言に集約されますね。


映画「La Danse Le ballet de l'Operqa de Paris 」 10月7日公開
(日本では、『パリ・オペラ座のすべて』 10月10日、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー)


「Millepied/Paul/McGregor」 「ミルピエ、ポール、マクレガー」
公演:11月7,10,11,13,14,15,19,20,21,22日
料金:6~67ユーロ
会場:Palais Garnier
Place de l'Opéra
75009 PARIS
予約:www.operadeparis.fr にて販売中
電話:33 (1)71 25 24 23 ※9月28日より
※窓口では、10月5日より販売

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