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冬を越え、力強く花を咲かせる桜のように、新たに歩んでいくパワーをわかち合えたら――3月に東北地方をおそった未曾有の震災の直後、そんな思いのもとツイッター上で「#sakuramovement」を立ち上げた冨永愛さん。
全国から想像をはるかに超えるほど桜の写真が多く寄せられ、それらの写真がコラージュされて1枚の大きな桜の絵になって・・・まさに"ムーブメント"となったこの活動が、写真展『I, Tominaga』という形で、さらに多くの人たちと思いを共有できる場が実現した。
ツイッターに投稿されたたくさんの桜の写真をコラージュして、1枚の桜の木の絵が完成。
大きな桜の木のコラージュ写真とともに、冨永さんの昔からの友人であるフォトグラファーのレスリー・キーさんや蜷川実花さん、TISCHさんらによる彼女のポートレート写真と、冨永さんが国際NGOジョイセフのアンバサダーとして訪れたザンビアでのドキュメンタリー映像が会場で流れる。オープニング当日の今日、目の前に現れた彼女はすらりと美しく、話し始めると誰もが惹きつけられてしまうようなチャーミングさの持ち主だった。
展覧会のオープニングの日、会場でインタビューに応じてくださった冨永愛さん。
――震災発生直後から、冨永さんが支援する団体の支援活動への寄付を呼びかけたり、チャリティイベントに参加するなど、冨永さんの活動を見て励まされ、自分もできることをしようと触発される人が多かったと思います。4月に「#sakuramovement」を立ち上げた経緯を教えていただけますか。
「3月末頃に、いつ桜が咲くんだろう、というワクワクしたり、つぼみが膨らんできたとニュースで聞いて気分が高揚したり――そんな元気になれるような気持ちを、東北の方たちにも味わってほしいなという思いから、仕事の合間にバックステージで始めたんです。桜は再生と回復の象徴で、生命力が強い。それに、いま、美しいものを見て癒されるということがすごく大事ではないかと思って。それでツイッター(@Ai_Tominaga)で『#sakuramovement』を立ち上げたら、全国のみなさんがどんどん投稿してくれて、たくさんの桜の写真が集まりました。
その後、東京の桜が終わりかけた頃に、ふくしまこうすけさんという若い方が、集まった桜の写真を1本の桜にコラージュしませんか、とツイッターでコンタクトをとってくださったんです。それでできたのがあのコラージュ写真。だから私が何かをしたというより、本当にみなさんがつくりあげた活動です」
冨永さんの長年の友人でもあるフォトグラファー、レスリー・キーさんによるポートレート。
――今回の展覧会を、レスリー・キーさん、蜷川実花さん、TISCHさんと開催するという構想はいつ頃からありましたか?
「先日、『#sakuramovement』のコラージュ写真を、WFPチャリティ写真展で飾らせていただいたんです。名古屋、京都、玉川髙島屋での巡回展で、玉川髙島屋ではトークショーにも参加しました。来場者がみんな感動してくれて、実際にツイッターで写真を投稿した人も見に来てくれて――その感動をもっと広げていきたいなと思っていたときに、GYREさんで展覧会をできることが決まったんです。
と言っても、コラージュ写真は1枚しかないので、私の写真も一緒に飾らせていただくことにしました。いままで10数年やってきたキャリアのなかで、"人がいて、自分がいる"――ここまでやってこられたのは、みんなのおかげだったんだなって、震災後に改めて感じたんです。『#sakuramovement』もみんなの協力があってできたこと。その協力しあう気持ち、みんなでなにかをつくりあげる気持ちが、いまはすごく大事だと思っています。そんな意味も込めて、私の写真も展示させていただいています。
レスリー・キーさんは、私のデビュー当時からのお付き合いなので、昔の写真も一緒に展示しています。何を美しいと思うかは、人それぞれですよね。でも、みんなが同じようなものをかっこいいとか美しいと思いがちではないかなと最近感じていて。完成された"美"というものは、美しくて当たり前。それなら、"美"の幅を広げられたら、みんなが自分自身にとっての美しさを見つけられるんじゃないかなと思ったんです。
だから今回、3人のフォトグラファーと作品を撮りおろしたときも、普段雑誌では撮らないような写真をあえて撮りました。見てくれる人に夢をもってもらえたら、いろんなことを考えてもらえたら、と思って。震災後、日本では経済も落ち込み、これからどうなるのか不安に思っている人がたくさんいると思います。特にファッション業界は、とても影響を受けてしまっています。そのなかで改めて、ファッションとは何か、発信する側は何をしていけばいいのかと考えると、もっとみんなが夢を見て、ファッションに興味をもてるような、そんな写真を撮っていくのもいいんじゃないかな?って。そんなメッセージも込めています」
こちらは蜷川実花さんによる作品。3人それぞれが、これまでに撮影されたものと、今回のために撮りおろした作品を並べて展示している。
――「#sakuramovement」の今後の展開予定、こんなことをやっていきたいという企画がありましたら、教えてください。
「この『#sakuramovement』は、LOOM NIPPONという団体に協力しています。LOOM NIPPONは震災後に立ち上げられた団体で、被災地の雇用と、津波で流されてしまった桜の名所に植樹することを目的にした活動。『#sakuramovement』でも、みんなが桜を見て心安らいだり元気をもらったりできるように、LOOM NIPPONに協力して桜の植樹をしたり、もしかするとまた来年、桜の写真を集めてコラージュしたり、ツイッターで誰かがいいアイデアを提案してくれたら実現させたり・・・この活動はみんながつくりあげていくものなので、形はいかようにもなるし、可能性も無限大だと思います」
『フィガロジャポン』本誌でもおなじみ、TISCHさんによる作品。
――先月半ばには、被災地である岩手県釜石市と大槌町を訪れられたそうですね。現地のお母さんや妊婦さんとお話されたなかでのエピソードなどありましたら、教えてください。
「大丈夫ですか?と聞くと、大丈夫です、みなさんのおかげで生きています、がんばっています、と言われて――被災地の方たちは、3カ月経ったいま、泣き言なんて言わずに、すごくがんばっているなあ、と感じました。みんな一所懸命前を向いて生きている、生きていくしかないんだろうなあ、と。妊婦さんやお母さんたちに会ったときも、すごくみんな明るくて。私が会いに行ったことを喜んでくれて、いろんなお話をしましたが、ネガティブなことを話していても、ネガティブに聞こえないんです。
3歳の双子のお子さんがいるお母さんが、仕切りがなくプライベートもない避難所で、子どもが騒いだときに、"うるさい!" "静かにしなさい"って怒られたそう。でもその隣で"そんなことで怒らなくてもいいじゃない"という人もいる。その板ばさみになって、避難所での生活は、ほんとうに辛くて体調も崩して、大変だったんだよねー、って明るく話してくれて。お母さんって強いなあ、と思いました。いままでずっと生活してきた風景がなくなってしまい、あんな状況でずっと過ごしてきた彼女たちの心情は計り知れない。すごく大変だったと思うし、落ち込んだと思う。それでも前を向いて生きていかなければならない、とみんな思っているんだと思います。
だから私たちは、できるだけサポートしていきたい。『#sakuramovement』のツイートのように、小さなことでも集まれば大きなムーヴメントになる。それを忘れないで、私たちは生きていかなければいけないな、と強く思います」
会場内では、冨永さんが国際NGOジョイセフのアンバサダーとして、ザンビアを訪れたときのドキュメンタリー映像も上映されている。現地の民族衣装や日本の浴衣などで、ファッションショーを一緒に楽しむ姿が印象的。
――madameFIGARO.jpのユーザーへ、メッセージをお願いいたします。
「この展覧会は18日までやっているので、ぜひ見にいらしてください! そして、これからいままでよりももっと、辛い状況になるかもしれない。被災地はおそらく短期間では復興しないけれど、それでも、自分の力は小さいんだなとは思わないで。自分ができることは必ずあるし、それをあきらめないで、被災地の支援をしていってほしいです」
とても気さくで率直、そして被災地の女性たちとのエピソードを尋ねたとき、少しの間言葉を止めて考えたり、ひとつひとつ丁寧に言葉を選んで話す冨永さん。さまざまなエピソードへと話が広がっても、最後にすうっと質問の答えに戻ってくる、そんな彼女の言葉のすべてに、真摯な人柄が表れていたように感じた。被災地の復興を願って、自分にできることをする――その第一歩を率先して踏み出し、人々をインスパイアする、そんな能力と使命を自覚して静かに受け入れているかのように、軽やかにムーヴメントを起こしていく。会場を訪れたら、きっとそんな彼女にやさしく後押しされるように、自分もできることをやっていこうと感じるはず。
会場では桜のコラージュのポスターやポストカードが販売されるほか、レスリー・キーさん、蜷川実花さん、TISCHさんによる展示作品のサイレントオークションも開催中。配送料を除く売上げ全額が、ジョイセフを通して、東日本大震災と発展途上国への支援に寄付される。こちらもぜひチェックしたい。
●7月1日(金)~7月18日(月)
●EYE OF GYRE
東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
Tel. 03-3498-6990
開)11時~20時
会期中無休
入場無料
トークショー開催!
7月3日(日)レスリー・キー×JOICFP広報 小野美智代
7月10日(日)蜷川実花×土屋アンナ
7月17日(日)TISCH×『Numero』編集長 田中杏子
http://gyre-omotesando.com/

